太陽光発電設備を導入する上でのリスクの一つである電圧上昇抑制。
これが発生してしまうと、最悪売電ができなくなってしまいます。
今回はなぜ電圧抑制が起きてしまうのか、また、どうすれば防ぐことができるのか。
発生してしまった時の対策方法についてまとめていきたいと思います。
電圧上昇抑制が発生する理由は?
電圧上昇抑制はその名の通り、電圧が上がりすぎないように抑制しないさい、ということです。
私達が普段使用している電気には電圧がかかっており、電化製品などはこの電圧の範囲内で使用するようになっています。
このことが電気事業法という法律で定められています。
本来この法律は、電力会社、もしくは一部の商社の電気を売るという事業にしかかからなかったのですが、太陽光発電によって、自家で消費できない電気を売るという行為により、各個人が電気を供給する立場(発電所)になったことで同様に適用されるようになっています。
太陽光発電設備を使って電気をたくさん送ろうとすると、電圧が上がってしまいます。
この規定の範囲が電圧101V±6Vです。
この範囲内に収まるように電気を送ること。というのが法律で決められているため電圧が上がりすぎないようにパワーコンディショナ側で制御をかけています。
一方で、これに反して高い電圧を受け続けるとどうなるか?というと、
一般的には電化製品の寿命が短くなる。
と言われています。
これの顕著な例として、白熱電球が例として挙げられるのですが。
電気屋さんには100V用と110V用の白熱電球が売られていたのはご存知でしょうか。(/ω\)自分は気にするまでまったく・・・
今はLEDの普及によってほとんど見なくなってしまいましたが、まだ最近の話です。
一般家庭は100V用で大丈夫なのですが、大型のビルなどは110Vの電球が使われています。
これを逆に使用してしまうと、100V用電球は明るくなり、寿命が短くなります。
110Vに100Vを利用した場合、電球は暗くなり、寿命が長くなります。
ただ、同様に他の家電製品において同様な区別があるかと言うとそうではないです。
家庭用の電化製品を会社で使ってはいけない。
なんてことはありません。
この辺りは家電製品側をJISで定められており、110Vまでは、通常通り使えるようにしなさい。
ということになっているようです。
実際にはよっぽど大丈夫なように作られておりまして、
新居が出来てまもなく、「電気保安協会」から来たという人が分電盤の確認に来られると思います。
その方は、ほんの短い時間ではありますが、125Vの電圧を掛けて、分電盤とその電線の安全性を確認しています。(*^.^*)精密系でも125Vならほぼ大丈夫
※実際に電線だけであれば500Vもかけることもあります。
やはり電気は水と一緒で、電圧が上がれば、周囲にかける負担も増えます。
110Vまで安全です。
というJIS規格は、あくまで保証の範囲内であり、
保証期間を過ぎて、本来20年持つはずだったのが、19年になっている。ということはあるかもしれません。逆に電圧が低すぎると動作しない(水で例えると水車が回らないぐらいの水圧)場合もありますので、やはり100V前後が良いのではないかと思います。
少し話がズレましたが、太陽光発電設置した施主側としても、101V±6Vを守らなければならなく。
そのため、売電することで上がりがちな電圧を、売電量を抑制することで、規定の電圧に抑えようとしています。 これが電圧上昇抑制の原因です。
電圧抑制が起こってしまった!どうすればいい?
電圧抑制が起こってしまった場合、まず見ておくのはその頻度です。
かなり頻繁に起きているのであれば売電量にかなりの影響が出ます。
我が家の場合、本来であれば図のような山型になるのですが、実際には頂上部分が削られたような形になってしまっています。
それほど気にしなくて良い量であれば、そのままでも仕方がないかなと思います。
その”仕方がない”と判断する理由は、この後の対策費用に大きく影響していきますので、今は実際にどの程度抑制されているのかを見ることが大事です。
電圧抑制が起きている。考えられる原因は2つ。
実は電圧上昇抑制が働く原因は、太陽光発電と、送電線の電圧によって決まってきます。
電気は水の流れと一緒で、電圧が高い方から低い方に流れます。
送電線から送られてくる電気が100Vであった場合、送り返す電圧は100V以上でなければ、電気を流すことはできません。
それもたくさん送ろうとすれば、電圧の差はもっと大きくなります。
送電線の電圧が既に101V±6Vを超えている可能性もあり、発電した電気を売ろうとしたら、いきなり電圧抑制がかかってしまった。というケースもあります。
その場合、送られてくる電気が悪いということで、電力会社に改善を求めることができます。
一方でそうでは無く、太陽光発電による売電で、たくさん電気を送ろうとするがために電圧が上がっているのであれば、電力会社は法律違反の原因ではないので基本的に何もしてくれません。
その場合、電力会社に自分からお願いして工事をしてもらうことになるため、費用が発生します。
その費用が、今回の抑制による売電できなかった分と比較してどっちがトクか?ということを検討しなければなりません。
そんなこと言われても送電線の電圧なんてどうやったらわかるの?(中部電力の場合)
大丈夫です。その点については電力会社にお願いするか、電圧抑制が起きているから調査してほしいと頼めば調査、測定してくれます。
ここまでについては、電力会社側の送電線圧が高いのか太陽光のせいなのかはわかりません。もしかしたら送電電圧が高いかもしれない。ということで電力会社は動いてくれますので、費用は発生しません。
実際に測定には1週間程度時間がかかります。
電圧は常に一定ではなく、周りでどれだけ電気を使っているか、太陽光発電の影響、お昼休み、休日の使用量などで大きく変化します。
電力会社としては、その間に101V±6Vを一度も超えていないことが条件になります。
ただし、夜間は電圧が下がっているのに、昼間太陽光発電が動いていると電圧がぐんと上がる。
また、くもりや雨の日は、電圧が上がらない。
など、調査の結果、”太陽光発電を設置することによっての電圧上昇”であることがわかれば、施主側で何かしなければなりません。
大容量の太陽光発電設備を導入している大抵の場合は原因は太陽光側にあると思われます。
電圧抑制で売電ができない!対策のための5つの方法
調査の結果 太陽光発電が原因の様子。そこでできる対策は何があるでしょうか?
太陽光発電対策の方法は様々です。
それぞれの状況によって対策はありますので、その中でもいくつかを紹介したいと思います。
まずひとつ目です。
1,配電線路を太くする。
一番近くにあるトランスと呼ばれるバケツのようなものから、自分の家に繋がっている電線を太くすることで、電圧降下が起きにくくなり、計算上売電するための電圧を上げることができます。
写真左上の円柱状の物がトランスです。
急に専門用語がたくさん出てきてしまいましたが、
電気は水と同じように考えられる点があり、水の通り道(電線)を太くしてやることで、たくさん水を流せるようになり(電流)、水路にかかる力のロス(電圧降下)が抑えられ、少ない電圧上昇でたくさん流せる。
というような考え方です。
家から、電柱のトランス(バケツみたいなもの)までの距離が長い時に有効な方法です。
電線を新たに引き込むための工事が必要になるため、大掛かりなものになる可能性があります。
距離にもよると思いますが数万~数十万と状況によってかなり変わってきます。
2,トランスを増設する。
家から一番近い電柱に先程のトランスがなければ、一番近い電柱にトランスを付けていただくことで、電線の距離が短くなり、電圧降下が小さくなることで売電がしやすくなります。
こちらも電柱にトランスを取り付ける必要があるため、30万~50万程度かかると聞いています。
3,全量売電の家庭であれば引き込みの線を2条にする。
2条にする、ということは電線を2系統にするということなのですが、線を太くすることと同義だと思われるかもしれません。
ですが、この場合は少し意味が違います。
電力会社に電気を売る売電と買電の線路をそれぞれ独立させます。
これは、規制点という、101V±6Vがどこの点で制限されるか?
ということから発せられています。
ちょっと説明しますと・・・
全量売電と余剰売電の規制点の違い
上の図のように家のものすごく近くの点で101V±6Vの規制点ができてしまいます。
この場合、トランスまでの距離があり、そこに到達する頃には107Vに上げた電圧が105V程度まで下がってしまいます。
本来ならもっと高い電圧でじゃんじゃん売電したいところなのですが、
パワーコンディショナがどんどん売電しようとして電圧が高くなる。→
規制点での電圧が高くなる。→
パワーコンディショナが電圧上昇を抑制をする。
といった状態になってしまいます。
そして、これは余剰売電の場合の考え方と同様なのですが、対策として2条にして、売電と買電を独立させた場合。
上の図のように家の近くではなく、トランスに101V±6Vの規制点が設定されます。
そうすることでパワコンの整定電圧をより上げることができ、より売電をしやすくすることができます。
- 電圧の数値については目安です。
- 間違っている可能性もありますので、すべてを鵜呑みにせず確認よろしくお願いしますm(_ _ )m
4、電力会社に送電電圧を少し下げてもらう。
送ってくる電圧を下げてもらって、売電をしやすくするという全てを解決するアッパレな方法なのですが。\(^_^)/あっぱれ
これは実は電力会社的に非常に大掛かりです。
我が家のために、送ってくる系統全ての電圧を下げる。
ということになります。
この”電圧を下げる”ということは、機器が正常に動作しないリスクを電力会社が負うことになります。
我が家としては電圧を下げてもらってどんどん売れればバンザイなのですが、電圧を下げた結果、工場などの大電力を使う場合、電圧不足で機械が動かない。
なんてことになったら会社にとって大損害です。
特に雨、ないしは曇の日の平日の昼間が危険です。
もちろんどこまで安全に電圧が下げられるかを調査しての判断だと思いますが、広範囲に影響をおよぼすものと考えられ調査にも時間がかかります。
その結果、下げられるとなってもほんの少しだけだと思われます。
あまり期待できる方策ではありませんし、電力会社も応じてくれるかわかりません。
5,周囲の家庭においても出力制御を導入する
周りの家に大容量の太陽光発電設備を導入している家があれば、その家が発電して売電していることで周囲の電圧が高くなっていることがあります。
さらにあなたの家も売電することでさらに電圧が高くなり電圧抑制が発生するケースもあります。
いやらしい話ですが、その場合、元々ある家も新たにあなたの家が立ったことで、なんらかの電圧抑制を受けている可能性があります。
元々ある家にとっては
普通に売電できたのに、あそこの家ができてからまともに売れなくなったなぁ。
と思われているかもしれません。
また、あなたとしては、売電できなきゃ困る!
と両者対立、ご近所トラブルになることは目に見えています。
現状では電圧抑制が発生した家が対策工事をしなくてはいけない様子です。
こうなってしまうケースが多いのか、色々なゴタゴタを避けるために、東京電力が旗を振って誘導を始めました。
こういったガイドラインをが電力会社から出されるということは、かなりの事例が背景にあるのだと思います。
大容量発電設備が設置できるのは一条工務店だけ!ということもなくなり、今やセキスイハイムやパナホームも大容量のの発電設備を設置できるようになっています。
電圧抑制はこれから先、どんどんと出てくることなだけに、事後の対応でなく、事前の対応をハウスメーカー、電力会社で考えることでトラブルが少なくなればと思います。
最後に
太陽光発電の電圧抑制が起きてしまうと、満足な売電ができなくなる可能性があります。
その際に必要な工事費などは施主持ちとなることが多いそうです。
その金額はとても安いものとは言えません。
ですが、電圧抑制が解消されて、満足な売電ができることも、全量売電の場合向こう20年間は大きなメリットです。それと比較しつつ、どの対策を進めるか、または何もしないかを検討することが必要です。
次回は”太陽光発電設備を検討中の方は必見!電圧抑制の発生しやすい地域と設備設計でなるべく抑制を防ぐ方法。”を紹介したいと思います。
コメント
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ありがとうございます。
とても分かりやすい記事でした。
勉強になりました。
対策等の記事も楽しみにしてます^^
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コメントありがとうございます^^
わかりやすいと行って頂けると、非常に嬉しいです^^
電圧抑制がおこる原因は色々ありますので、まだ氷山の一角かもしれませんが、色々調べていきたいと思います^^
ともGSさんのブログに中々コメント残せなくてすみません。
ですが、マイホームデザイナーのテクニックとか、色んなアイデア楽しんで読ませて頂いています^^
またお邪魔します~^^
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スペシアです。
さすがはっちさん、判り易く書きますね。
2条にする意味が解りました。
どうも調べていたら101±6Vと言うのは、供給場所での平均電圧で、時に最大110Vでも許されるようですね。
これが電圧抑制を0に出来ない理由のようです。
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すみません。
多重分を削除願います。
何故かPCなのにエラー表示が何度も出て。
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コメントありがとうございます^^
なるほど、それで平均値的には大丈夫でも、
瞬時値で電圧が飛び出るので、抑制がかかってしまうのですね。
「エラー認証できませんでした。」
と出ていても、しっかり認証されて、コメントできている時って結構ありますよね^^
自分もやってしまったことが何度かあります^^;